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就業規則を作成するメリット・デメリットを解説

「トラブルが起きてからでは遅い。」
就業規則は、会社と従業員を守る『見えない盾』です。
知らなかった・決まってなかった──それだけで裁判や損害に発展する今、就業規則の整備は「任意」ではなく「必須の備え」と言えるでしょう。
この記事では、そのメリットとデメリットをわかりやすく解説します。
目次
就業規則を作成するメリットとは?

就業規則は、法律で義務づけられているから仕方なく作るもの——
そう思っている方も多いかもしれません。
しかし、就業規則を作成・整備することは、会社経営にとって非常に大きなメリットがあります。
たとえば、労使トラブルの予防、助成金の申請、人件費の抑制、従業員の安心感の向上など、経営リスクの回避から生産性の向上まで、幅広い効果が期待できます。
特に、労務リスクの高まる現代においては、「きちんと就業規則が整っているかどうか」が、企業の信頼性を左右する要素にもなっています。
このページでは、就業規則を作成することのメリット、あるいは、作成しないことのデメリットについて、実務に即してわかりやすく解説していきます。
就業規則を作成するデメリットとは?

作成前に押さえておきたい注意点
就業規則には多くのメリットがありますが、作成や運用に一定の負担があるのも事実です。
ここでは主なデメリットを簡潔にご紹介します。
1. 作成に費用がかかる
社会保険労務士に依頼すると10~30万円前後の費用がかかることもあります。
自作する場合でも法的整合性の確認が必要です。
2. 工数・時間がかかる
労働条件の整理や条文設計など、現状把握から完成まで多くの工程が発生します。
複数部署が関与する場合はさらに複雑になります。
3. 従業員への「周知」が必要
作成後は、掲示や配布などでの周知が義務となっています(労働基準法第106条)。
「作って終わり」ではなく、従業員が内容を理解できる状態にする必要があります。
4. 定期的な見直しが必要
法律改正や制度変更に対応するため、継続的なメンテナンスが不可欠です。
対応しないと、内容が実態とずれてしまうおそれがあります。
5. 従業員の合意に時間がかかることも
ルールが不利益変更と受け取られると反発が起こる場合もありえます。
副業制限や懲戒規定などは特に慎重な説明が必要です。
手間や費用はかかりますが、トラブル予防・リスク管理・信頼性向上などのメリットはそれ以上です。
就業規則は「会社を守る盾」として、経営における重要な投資といえます。
就業規則を作成しないメリットとは?

就業規則はリスクを未然に防ぐ備え
就業規則は企業運営に重要な役割を果たしますが、従業員が常時10人未満の事業場には作成義務がありません。
そのため、「作成しない」ことによる以下のようなメリットもあります。
1. 費用がかからない
専門家に依頼したり、法的チェックを行なったりするコストが不要です。
労使関係が安定している小規模企業では、「必要ない」と判断することもあります。
2. 更新・メンテナンスが不要
法改正や制度変更のたびに就業規則を見直す必要がないため、継続的な対応や工数を省けます。
3. 柔軟な運用ができる
就業規則がなければ、社内ルールが固定されず、状況に応じて個別対応しやすいという考え方もあります。
一方で、社内ルールが不明確だとトラブル時に大きなリスクを招く可能性があります。
就業規則は『不要なコスト』ではなく、『リスクを未然に防ぐ備え』として考えることが重要です。
就業規則を作成しないデメリットとは?

「作らない選択」がもたらすリスク
就業規則は常時10人以上の労働者がいる事業場では法的義務がありますが、それ未満の企業でも作成しないことで重大なリスクを抱えることになります。
1. 罰則リスク
義務があるのに作成・届出を怠ると、30万円以下の罰金や企業名の公表につながる場合があります(労働基準法第120条など)。
2. 助成金が申請できない
多くの助成金は就業規則への制度明記が支給条件となっています。
未整備では申請そのものができません。
3. 従業員とのトラブル発生
ルールが不明確だと「不公平」「言った言わない」が起こりやすく、モチベーション低下や離職の要因になります。
4. 残業管理ができない
就業規則がなければ時間外労働のルールが曖昧になり、未払い残業代・是正指導・訴訟リスクが高まります。
5. 労使紛争で企業が不利に
懲戒や解雇を就業規則に基づかず行うと、裁判で無効と判断される可能性が高まります。
6. 統一ルールがなく信頼を失う
部署ごとに対応がバラつき、従業員の不満やSNS炎上、内部告発の原因になりかねません。
小規模企業こそ整備を
「まだ小さい会社だから」と放置せず、トラブル予防と信頼維持のためにも、就業規則は早めに整備すべきです。
会社を守る『経営の防波堤』として活用しましょう。
就業規則を作成してメリットがある企業は?

— 結論、就業規則はすべての企業で必要です —
「まだ小規模だから不要では?」と考える方も多いですが、就業規則はすべての企業にとって有益です。
労働時間・賃金・休暇・退職・ハラスメント・副業など、トラブルの火種となりやすい項目について、明確なルールを定めておくことで労使トラブルの予防や公正な対応が可能になります。
特に、以下のような企業には就業規則の作成を強くおすすめします。
・制度やルールが曖昧な企業
⇒「残業代の起算点は?」「有休の取得条件は?」など、日常的な疑問を解消できます。
・ハラスメント・副業・SNSなど新しい課題に備えたい企業
⇒ 曖昧なままだと従業員トラブルに発展するリスクがあります。
・これから事業拡大や営業所の新設を予定している企業
⇒ スタッフや拠点が増える前に、共通ルールを整備することが重要です。
・助成金を活用したい企業
⇒ 多くの助成金で「就業規則に制度が明記されていること」が申請条件になっています。
たとえ義務のない規模でも、リスク予防・信頼構築・制度活用の観点から、就業規則は「経営の安全装置」として機能します。
今こそ、将来を見据えて整備しておくことが賢明です。
就業規則の作成義務がある企業とは?

労働者が常時10人以上になったら作成義務あり
就業規則の作成義務は、常時10人以上の労働者を使用している事業場に課せられています(労働基準法第89条)。
この「10人」には、正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員・派遣社員など雇用形態を問わずカウントされる点に注意が必要です。
就業規則には作成だけでなく届出の義務もある
就業規則は作成するだけでなく、所轄の労働基準監督署への届出が義務付けられています(労働基準法第89条・第90条)。
対象となるのは、常時10人以上の労働者を使用する事業場です。
「作るだけでいい」と思っていた方は、ぜひこの機会に届出の手続きまで確認しておきましょう。
就業規則は届出されていなくとも効力を発揮する?
届出がなされていない就業規則であっても、一定の条件を満たせば効力が認められるケースがあります。
その代表例が、フジ興産事件(最判 平成15年10月10日・最高裁第二小法廷)です。
この事件では、労働基準監督署への届出がされていなかった就業規則について、「労働者に周知され、その内容が合理的であれば、就業規則としての効力を持つ」と判断されました。
つまり、届出がなかったとしても、
・労働者に周知されていること
・内容が合理的であること(社会通念上妥当)
この2点がそろっていれば、就業規則の法的効力が認められる可能性があるということです。
ただし、これはあくまで例外的な扱いです。
トラブル時に企業側が不利になるリスクを避けるためにも、就業規則は必ず正しく届出しておくことが最善です。
就業規則はメリット・デメリットを考えずに作成すべき!

安心して働ける環境にするためにも必須
就業規則は、「作ったほうがいいかどうか」を検討するものではありません。
就業規則は労使トラブルを回避できる「保険」のような存在です。
一度でもトラブルが起これば、作成費用をはるかに上回るコストと時間を失う可能性があります。
メリット・デメリットを比較する以前に、作るのが当然。迷っている時間があれば、まずは一歩踏み出すことが、経営者としてのリスク管理の第一歩です。
まとめ
就業規則を作成することで、労使トラブルの予防や助成金申請、従業員の安心感向上など、多くのメリットが得られます。一方で、作成や更新には費用や手間がかかることもありますが、トラブル発生時の損失を考えれば、十分に元が取れる「経営の保険」です。
義務のある企業はもちろん、それ以外の企業にとっても、就業規則は備えておくべき必須のルールブックといえるでしょう。







